私が子供の頃、近所に『鬼婆』とよばれている老人がいた。
町内では有名なお婆さんで、成人男性ですら怖がって近づかない。
同じくキチで有名なモンペも尻込みする程。
このモンペ母娘が鎌を持った鬼婆に追いかけられて
泣いて謝っているのを見たときは本当に驚いた。
割と広い平屋に様々な花を植えて一人暮らしだったと思う。
少しでも庭に侵入すれば血祭りは当たり前。
私の母は絶対に鬼婆には近づくなと再三に渡り言い聞かされた。
ある日、ふと鬼婆の家の前を通ったときに、
庭に咲き誇るヒマワリに見とれてしまって、庭の入口からぼーっと眺めていた。
はっと我に返ると目の前に鬼婆が仁王立ちしてた。
さーっと血の気が引いて、大袈裟かもしれないが、死を覚悟。
恐怖で体も口も動かず涙だけがこぼれ落ちる。
すると鬼婆は、無言でひまわりへ向かい何かを回収。
少し汚れた巾着袋にそれを入れて私に投げ渡した。